先手じゃさせない? 後手番専用戦法
将棋は通説的に、先手微有利ということは知っていたのですが、
こんな記事を読みまして、
数字的には先手勝率52%程度というのには改めてビッックリ
中に、
「先に指す得」VS「後に指す得」
というフレーズがありましたが、
将棋には分かりやすく、
「後手にしかできない戦法」
というのがあります。
奇襲的なものもあげれば結構あるのですが、
今回はタイトル戦などでも使われる2つの戦法を紹介します。
ふざけた戦法名ですが、
一時期はプロでもアマでも大流行した戦法で、
今でも、まさに今日(H27.11.9)
タイトル戦(王将)の挑戦権をかけた対局で、
羽生四冠を相手に、久保九段がゴキゲン中飛車を採用しました。
その明快さから、今でもアマチュアでは非常に人気があり、
個人的にも初心者にもオススメできる戦法です。
基本図はこちら
初期配置から、
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △5四歩
▲2五歩 △5二飛
と進み、この状態へなります。
ここからわかりやすく、
こんな感じで攻めることもできます。
真ん中からの棒銀というわけですが、
飛車のラインが居玉にかかっているため、
非常に怖い攻めです。
中々こうはうまくいかず、攻めが止められることもありますが、
こんな風に振り飛車らしくさっと片美濃に組む事もできます。
軽快な攻めと、この柔軟性が非常に魅力のある戦法です。
で、なんでこの戦法が後手番専用なのかというと、
先手で同じようにしてみると分かります。
初期配置から▲7六歩△3四歩▲5四歩と
ぱっと見自然な駒組
ですがここで
△8八角成 ▲同飛車 △5七角
これで後手がどうやっても馬を作る事ができて、
これは後手優勢です。
仮に、後手が飛車先をついてとしたら
こんな風に受けることができます。
「相手が手を指す事によってできることが増える」
というのは、将棋の面白いところですよね。
(補足:一応先手でも初手▲5六歩とすることでゴキゲン中飛車をさせますが、
最初から「あっ、こいつ中飛車やるな」ってのが丸わかりなのが痛いところ。)
横歩
以前紹介した居飛車の記事でも出てきましたが、
横歩というのは後手から誘導する戦法です。
初手から
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8四歩
▲2五歩 △8五歩 ▲7八金 △3二金
▲2四歩 △同負 ▲同飛車 △8六歩
▲同歩 △同飛車 ▲3四歩
ばばっと進んでしまいましたが、
お互い角道を空けながら、飛車先をひたすらつきまくり、
後手が角道を空けた時の歩をとりこむ戦型です。
飛車が3筋の歩をとるから横歩取り。
そういう意味では先手が横歩をとらないで、
後手の望む展開にならないことはそれはそれでありますが、
とりあえずそれは置いとくとして、
今回はここからの変化でも一番激しい戦法を紹介します。
ここから後手は、
△8八角成 ▲同銀 △2八歩 ▲同銀
と準備をして、
△4五角!
飛車取りなので先手は飛車を逃げますが、ここから、
▲3五飛 △6七角成 ▲同金 △8八飛成
と強襲します
後手はこの大きく駒損こそしてるものの、先手玉は、
見るからにすぐ詰んでしまいそうな形になってしまいました。
今ではハメ手とされていて、
先手が優勢となるとされているのですが、
△4五角から正確に受けきるには、死ぬほど多くの気をつけることがあり、
プロでは指されませんが、アマチュアではしばしば指されます。
ぼくも指します。
横歩は基本図から、すぐに△3三角とする戦法がいまではブームですが、
それも、これほどアグレッシブではありませんが、
後手が主導権を握っていく将棋となります。
後手のみ指せる戦法としては他にも、
一手損角角換わり
(書くと長い癖にインパクトが薄いから選外)
だったり、
プロでは使われない奇襲戦法として
パックマン戦法だったり
(インパクトは異常だけど肝心の自分が詳しく無い)
だったりとあるので、
調べてみるのも面白いと思います。
それでは今回はそんなもんで。
ちなみに、後手番専用でも、
先手が端歩をついて相手がそれを無視すれば先手でも後手番専用がさせるよ!
先手ってずるいね!
棒銀の種類から学ぶ 将棋の戦法とは
「オススメの戦法は?」
というありふれた質問。
しかしながら、将棋の戦法というのは「これがオススメ!」とぱっと答えられるものは意外と少なく、難しいものです。
それは何故か?
戦法とはそもそも、相手によって変えるものなのです。
さて、ここで「初心者にオススメの戦法は?」と聞かれて、
解答率堂々のNo1を誇る棒銀
棒銀は比較的相手を選ばずに使える戦法ではあるんですが、
実は状況によって狙うべき攻め方というのは少しずつ違います。
今回は5種類の棒銀を見ていきましょう
1.原始棒銀
将棋ウォーズを始めたらしばらく得意戦法に居座ることに定評のある原始棒銀
発生する条件がゆるゆるのため、ウォーズでは非常に出やすいのですが、
本来は対矢倉囲いの戦法です。(定義がやや曖昧ですが)
とりあえず細かい手順とかは置いておいてこういう盤面で、
▲1五銀 △5二金 ▲4五歩 △同歩
としたら
こうなればもらったもんで、続けて
▲2四歩 △同歩 ▲同銀 △同銀
として
▲1一角成!
今この瞬間の駒の損得だけ見れば後手が勝ってますが、
当然馬が作れて相手の矢倉のなりかけの陣形をぼろぼろにして、
明らかに先手優勢です
実は原始棒銀は対矢倉決戦兵器だったのです。
2.矢倉棒銀
続いては矢倉棒銀
これはお互い矢倉に囲い合い、そこから棒銀をする戦法
先ほどとは違って自分も囲っています。
例によってとりあえずここから
▲2五歩 △7五歩 ▲同歩 △同角
後手は矢倉のよくある攻め方の一つで、
ここから飛車角銀桂馬をうまく使うのが狙いです。
ここから、
▲3八銀 △6四角 ▲2七銀 △7四銀
▲2六銀 △7三桂 ▲1五銀 △2二銀
お互い攻めの形を整えながら、先手は棒銀です。
棒銀対策で後手は2二銀としましたが、
▲2四歩 △同歩 ▲2三歩打 △同銀
と銀をおびき寄せて
▲2四銀 △同銀 ▲同角 △2三歩
▲4六角 まで
銀交換と、角交換も見える形になりました
棒銀は成功です
3.角換わり棒銀
続いては角換わり棒銀
アグレッシブな角の交換という行動に、
さらにアグレッシブな棒銀を合わせた戦法
例によって基本図から
▲2七銀 △7四歩 ▲2六銀 △1四歩
今まで特に触れてなかった1筋の歩をつかれてしまい、
銀はすぐは出られないのですが、
▲1六歩 △4八玉 ▲1五歩 △同歩
構わず端からの攻撃を決行し、
▲1五同銀 △同香 ▲同香 △1三歩
一旦攻めが止まってしまったかのようにも見えますが、
ここから桂馬を狙いつつ、
▲1二歩 △2二銀 ▲1一歩成 △同銀
失敗したかのようにもみえますが、
▲8四香 △同飛
ここで▲6六角!
飛車と銀の両取りがかかる非常に強力な1手に繋がります。
まさに角交換したからこその1手です。
4.相掛かり棒銀
次は相掛かり棒銀
字のごとく相掛かりから棒銀する戦法
おそらくお互い棒銀しか知らない初心者同士なら相掛かり棒銀になる
例によって基本図から
▲3八銀 △4二銀 ▲2七銀 △5二金
▲2六銀 △4一玉
棒銀をみせながら相手の出たしを遅れさせ、
こちらもこの後玉を囲うというなどゆったりめの将棋になります。
5.対振り棒銀
最後に対振り棒銀
このような場面から、相手の突破を狙う訳ですが、
残念ながら自分が詳しくなくて書けません。
▲3五歩 △3二飛 ▲3四歩 △同銀
になるぐらいまでは知ってますがその後はよくわかりません。
棒銀側はわかりやすく取って取り返してといきたいのですが、
振り飛車側が中々同歩ととってくれない場合もあり、
(今までのも対策を知ってればといったところではありますが
飛車と銀の連携でしっかりと戦う将棋になります。
このように、相手の戦法が違うだけで、
こちらが同じ棒銀でもその狙いというのは少しずつ変わってきます。
棒銀だけでもしっかりと戦うことはできますが、
相手によってどのように攻めるかをきちんと考えれられるようになると、
きっと、もっと将棋が楽しくなることでしょう。
これを知らなきゃ居飛車はできない? 相居飛車5大戦法
将棋には
・居飛車(飛車を右側に据えて戦う)
・振り飛車(飛車を左側に据えて戦う)
という2種類の戦い方があります。
これらの組み合わせでも
の3つが存在しています。
今回注目するのはこの相居飛車
実は相居飛車というのは、1つの戦法に大別することができるのです。
その5つが、
・矢倉
・角換わり
・相掛かり
・一手損角換わり
・横歩取り
それぞれ見ていきましょう
1.矢倉
「矢倉は将棋の純文学」 とまで言われた矢倉
なんと、囲いであるにも関わらず、戦法名にまでなっています。
基本的には、先手が矢倉囲いに進め、
後手は同じく矢倉を作るか、もしくは矢倉を崩すことを狙います。
イメージ的に一番基本的な戦いかな?とも思われるかもしれないんですが、
相居飛車の中では比較的穏やかで、何気に唯一角道を止める戦いになります。
非常に覚えることも多く、とっつきづらい部分がまさに「純文学」(そういう意味ではないとは思いますが)
将棋の基本のような顔をして紹介されることも多く、初心者が最初に手を出しやすそうな戦法なんですが、初心者には全然オススメできない戦法だったりします。
ちなみに、将棋ウォーズの戦法から画像をひっぱってきているんですが、
実は5大戦法に分類される戦法は背景が同じ色だったりします。
矢倉系は金色
2.角換わり
文字通りお互いに角を交換する戦法
ハム将棋に角を交換され、その角をうまく使われて、
嫌な思い出がある人も多いかも知れませんが、
まさに思い描く風に、お互いの攻撃力が格段に上がります。
嫌がる人も多く、基本的に後手に角を取りにきてもらう戦法なんですが、
初心者同士の対局だととってくれないこともしばしば
(詳しくは割愛しますが)
非常に危険が多く、初心者には避けられがちな戦法なんですが、
角の交換は、ハムよろしく相手が無理矢理にでも角を交換しようとすると、
中々避けづらいところもあり、
将棋をしていく上では避けられないので勉強しておくべき戦法な気はします。
また、居飛車らしい攻撃的な将棋が楽しめるため、
「まさに居飛車!」という戦法は角換わりかなぁとかは思っています。
将棋ウォーズでの背景は赤
3.相掛かり
お互いの歩を一直線に進め合う戦法
「飛車先から相手を突破するぞ!」という意思がぶつかりあった、
非常に漢らしい戦型
お互い譲らないかっこよさはある戦法なのだが、
いかんせんどちらかが角道を空けるだけで違う戦法になってしまうため、
中々このような形になるのは少なかったりはします。
ただ、棒銀しか知らない初心者同士の対局だと相掛かりになることはしばしばあり得るかもしれないですね。
とにかく飛車先を貫く!と力強く指したい人にはオススメ!
......ではあるのですが、中々付き合ってくれる人が少ないかも
将棋ウォーズでの背景は緑
4.一手損角換わり
あれ?角換わりと同じじゃないの?って思った方。
はい、概ね同じ戦法です。
角換わりと一手損角換わりを一緒にして
「4大戦法」としている人もいるぐらいです。
じゃあなんで分けてあるの?ということですが、
角換わり→先手から仕掛ける戦法
一手損→後手から仕掛ける戦法
なのです!
「??????????」ってなると思いますが、
解説すると長くなるので、書くとしても別記事で!
将棋ウォーズの背景の色も角換わりと同じ赤です。
5.横歩取り
お互いがノーガードで殴り合う戦法
お互いが角道を開けっ放しにして、飛車の先をどんどんついていった先に待っている戦法です。
先手側は、角道を空けた時の歩がタダでとれるのでとりますが、
後手はそのかわりに、ここかから先に相手に技をかけていって、
主導権を握るという戦法です。
将棋はどうしても先手の方が、先に攻撃を仕掛けやすいため、
先手が攻撃、後手が防御という構図になりやすいのですが、
横歩取りは後手が先に攻めることができるのが魅力です。
お互いノーガード......というわけでも無いんですが、
ここから矢倉のようにじっくり囲い合うような展開はほぼありません。
覚えることも多く、避けられがちですが、大駒で殴り合うとてもアグレッシブな将棋になり、面白いです。
将棋ウォーズでの背景は青
以上が相居飛車の5大戦法です。
それぞれ非常に奥が深く、とても1記事ではそれぞれ本当に紹介ぐらいしかできませんが、居飛車党を目指すならば、これらそれぞれがどんな戦法かを知ると、将棋が面白くなっていくかもしれません。
なぜ棒銀は強いのか? 初心者にオススメできる本当の理由
「初心者ならまず棒銀!」
なんていうのは使い古された言葉で、
とりあえず棒銀を覚えるのが将棋の通過儀礼みたいになっている節はあります。
棒銀は確かに、歩と銀と飛車を絡めた基本的な攻めが学べます。
が、しかし!
棒銀は逆にその3つの駒だけで完結してしまっていて、
大概棒銀では桂馬が死に駒になります。角も場合によっては使いません。
で、
攻めの基本というのは、
飛車、角、銀、桂馬
あれ?本当に基本か?
そうです。
棒銀は将棋の基本かというと、
「あれ?若干だけど違うくない?」
ってなる戦法なのです。
じゃあなぜ棒銀が最初にオススメなのか?
1. 速い!
例えばですがこういう局面
こうなればほぼ先手優勢な訳で、棒銀の基本的な狙いなわけですが、
ここまでくるのに先手は何手を使ったか?
なんと6手です。
この状態は実質6手で対局が終わってしまったといってもいいぐらいです。
これは、簡単に組めて固い!といわれる美濃囲いとほぼ同等の手数で
これだけ強力な攻めの形を作れるわけです。
速いことによるメリットは沢山あって
・確実に攻撃側に回れる(=防戦一方にはならない)
・相手の手をある程度限定できる(=難しい将棋になりづらい)
・やることが少ない(=覚えやすい)
等々...
初心者にはうれしいメリットが盛りだくさんなのです!
2.押し付けれる!
相手がなんかよくわからない戦法を始めたときに、
棒銀なら困ることは少ないです。
後手側が何故か居飛車穴熊をしてきた場合
初心者同士ならこんなありえないことも起こっても不思議ではないです。
こんな状況でも
「とりあえず歩でとってとられたら銀でとればいいんでしょ?」
とすることができます。
結局棒銀の狙いというのが、
「銀で飛車先のサポートする」と単純で、
単純だからこそ変則的な状況にも強い訳です。
そして、相手がわからない強力な攻めをしようとしていても、
棒銀は先ほど書いたとおり、速いですから、
相手の攻めを見る前に攻めきることも可能なのです。
いかがだったでしょうか?
もちろん棒銀には
「将棋とはなんたるものか」
といったエッセンスも詰まっているもので、
基本的な戦術の一つであると言えます。
しかしながら、数ある戦法の中でもオススメされるのは、
「速いくて状況を選ばない、強力な攻めができる戦法」
だからと言えるでしょう。